――弟が死んだ。
最後の肉親を亡くしたわたし。
孤独死した弟の遺体を引き取り、遺品を片づけるため彼の部屋へ向かう。
若くして突然死した弟。
遺体の発見に立ち会った警察は現場になんら不審な点を認めなかった。
しかしわたしはある違和感を抱く。
弟は本を抱えて死んでいた。それも、まるで読みそうにない本を。
ページとページの間からはなんの変哲もないレシートがあらわれ、わたしはある奇妙な符合に気づく。
これは暗号だ。弟の死にはなにか秘密がある。
やがて解読された暗号には……
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いまでは退職し、世間とは没交渉な生活を送っている。
そんな彼の日課は朝刊だった。
読みものが好きな彼は、新聞記事でのみかろうじて世間とつながっていた。
あるとき、彼は奇妙な記事を見つける。
『暁通信』と題されたそれは、小さな特集記事だった。
ちょっと不思議な、日常のちょっといい話。
記事の内容を気に入った翁さんは、暁通信の愛読者になる。
ところが、暁通信の伝える記事は日ごとに異常さを増していく。
突然変異した新人類の発見、無政府法案の可決、水不足で干あがった海……
紙面を拡大し続ける暁通信はいつしか新聞全面をのっとっている。
さらには、翁さん自身の記事、とうに亡くなったはずの妻の記事までが掲載されはじめ……
ついに重い腰をあげた翁さんは、暁通信の謎を追いはじめる。
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灰色の帝都。
まったく同じビル群に、交錯するアスファルト。
電車にゆられての長時間の通勤。
人々は12桁の番号で呼ばれ、うつむきがちに生活している。
貧民街の集合住宅には臣民番号9850-3419-6520の名で呼ばれる男が住んでいる。
さがしもの名人だ。
――迷子の子猫を見つけるくらい朝飯前だし、うっかり落としたコンタクトレンズだってお手のものである。小さなさがしものばかりではない。生き別れた家族、どうしても思いだせない単語、老人が若かったころになくした大切ななにか(それがなにかさえ忘れてしまっている)、なんでもござれだ――
ある日、彼のもとに宮廷からの密使がおとずれ……
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